まず通信用の周波数には、事業者により違いますが、800MHz、2GHz帯を使っています。auの端末でWimax方式が入っていると、これは2.5GHz帯です。しかしそれ以外に、GPS用に1.5GHz帯を使います。無線LANも使っていますね。これは2.4GHzと5GHzがあります。ワンセグのテレビも見ていませんか?これは500~700MHzです。それだけでしょうか?モバイルSuicaの13MHzや赤外線も使っています。なんといろいろな周波数を使っていることでしょう。下から13MHz、700MHz、800MHz、1.5GHz、2GHz、2.4GHz、2.5GHz、5GHz赤外線と周波数のデパートのようです。
第6回
電波の周波数
① 通信方式と周波数
電波の周波数と波長の関係はすでに第4回の③で述べました。また第5回では、周波数が低い電波のほうが物陰によく回り込むと述べました。しかし通信速度や通信容量という点からは、周波数が高いほうが有利です。
周波数は総務省が割当てており、自分達で決められるものではないのですが、ここで、いろいろな通信方式が使っている周波数をながめてみましょう。
図7.1に低い周波数から高い周波数まで、周波数帯とそのよび方、波長を整理し、その右側にその周波数帯を利用している通信方式を示しました。
図21. 周波数とその利用
② 通信方式と所要帯域幅
AMラジオ放送のような音声のみを送る通信方式において、必要な帯域幅は1放送局あたり7.5KHzです。これですと中波(MF)帯は全部で2.7MHz = 2700KHzありますから、沢山の放送局が存在できます。一方、地上波デジタルテレビ方式に必要な帯域幅は6MHzであると言われ、中波帯には入りきれず、270MHzある極超短波(UHF)帯におかれております。さらには3G(第3世代)の携帯電話、ドコモのW-CDMAであるとかKDDIのcdma2000方式では、帯域幅は5MHzですが、いま話題のLTEでは最大15MHzにもなり、極超短波(UHF)帯に割当てられております。このあとの第4世代ではマイクロ波(SHF)帯を割当てると言われております。また衛星デジタルテレビ放送では実に34MHzの帯域幅が必要ですので、マイクロ波帯に置かれています。
高速の信号を送るためには、占有帯域幅が広いことが必要であり、ここに述べたように周波数が高くないと周波数配置ができません。
③ 電離層と周波数
電離層とは、高空にある窒素や酸素などが太陽光のエネルギを吸収した結果、その原子から電子を放出し、イオン化している層を指し、この電子密度が大きいので電波が反射されます。その様子を図21の中ほどに示しました。電離層は地表から60km~500kmの高さに形成され、昼間と夜間では様子がかわりますが、反射されるのは短波(HF)帯より低い周波数です。電離層での反射と、地表での反射を繰返して地球の裏側にも届くので、短波は南極や遠洋漁船との通信、あるいは全地球的な通信に使われてきました。近頃では衛星通信にとって代わられていますが、今でも使われています。
図22. 弊社製のHF帯アンテナ
④ 降雨減衰と周波数
5GHz以上の高い周波数では雨による減衰を生じます。これは、周波数が高くなるほど、かつ降雨が強くなると、減衰も大きくなるという関係にあります。例えば、10mm/hの降雨強度でのデータですが、10GHzの電波は1kmあたり約1dBの減衰を生じます。この値は30GHzになると10倍の約10dBにもなります。つまり10GHz以上の電波は見通し内といえども、長距離の通信への適用は難しいということです。
⑤ 通信方式により適した周波数を使う
以上述べましたように、まず地球の裏側までサービスするシステムでは、電離層を使う必要があります。その場合は短波(HF)帯が有効です。ただし今日では衛星を使うほうが多くの情報を運べるのでそちらに移っております。しかし全面的には移行せず、短波帯もまだまだ国際通信に使われております。
短波放送も現役ですが、音声放送は通信容量が小さいので、低い周波数で充分です。
携帯電話のように室内やビルの陰でも使えないと困る通信方式では、電波の回り込みが弱いマイクロ波帯以上の高い周波数は適していません。しかしながら最近のスマートホンでは高速なデータの送受信が求められ、しかも多くのユーザが同時に使いますから大きな通信容量が必要で、超短波(VHF)帯以下の低い周波数も適していないということになり、適した周波数はおのずと極超短波(UHF)帯に限られてきます。しかし周波数は限られていますので、次第に高い周波数を使用せざるを得なくなっています。
一方で、例えばテレビ放送や衛星放送では、受信アンテナを屋外に設置しておくことで、放送局からの見通しを確保しておけば良いし、大量の音声やデータを運ぶマイクロ波通信、これはNTTやKDDI等の通信事業者と警察、国交省、防衛省などで使われていますが、中継所の送受信アンテナで相手方が見えていれば良いので、マイクロ波(SHF)帯が適しています。但し、降雨減衰や大気吸収の影響は受けますので、長距離の地上マイクロ波回線には10GHz以下の周波数帯を用い、比較的短距離の携帯電話のエントランス回線などでは、11GHz以上の周波数を用いています。