動的反射方向制御可能なメタサーフェス反射板の開発
日本電業工作株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:瀬川 純、以下「日本電業工作」)は、総務省受託研究「アクティブ空間無線リソース制御技術に関する研究開発」※1の研究課題:ア-1-(a)-2「IRS・レピータ制御手法」の研究の一環として、水平と垂直方向に散乱パターンが同時に制御可能なメタサーフェス反射板を開発しました。
メタサーフェス反射板の概要
図1 メタサーフェス反射板の概要
特徴
特徴1 クロス形状反射素子により、直交する2偏波の入射波に対応
アクセスポイントからの送信波における偏波の切り替えにより反射方向を大きく変更可能
※正面入射に対し水平方向においてV偏波:+45°方向 / H偏波:-45°方向へ反射
特徴2 モータ駆動ユニットにより反射素子~GND板間距離を可変
反射素子とGND間の距離をモータ駆動ユニットにより可変することで、反射位相を制御
特徴3 水平方向・垂直方向同時に反射方向を可変
反射素子(ユニット)ごとにGND板の可変機構を設けることで、反射素子ごとに反射位相が設定でき、反射指向性を制御可能
想定利用シーン
電波の送受信が行われる環境によっては、カバーする通信エリアや不感地帯の位置・広さが時間の経過や様々な条件に応じて変化する場合があります。特に周辺の構造物の状況によって電波伝搬環境は大きく変化するため、電波を放射する方向を電気的に制御するアンテナ等が一般的に使用されていますが、このようなアンテナだけでは遮蔽物がある見通し外環境では急激に電力が低下することによって電波が到達せず、通信が出来ないエリア(カバレッジホール)が発生します。これらの対策として無線装置を増設すると、設備費用が膨大となるので、比較的に安価な反射板(メタサーフェス反射板)を用いて無線装置からの電波をカバレッジホールに向けて反射させることで通信エリアを改善することが可能になります。
図2 反射板の利用イメージ
メタサーフェス反射板の原理
入射波に対し、反射素子ごとの反射位相を調整することで、反射波の方向を変更。
図3 反射方向可変イメージ
メタサーフェス反射板の構成
反射素子の下側にGNDを備えた構造で、反射素子とGND板の距離を変更可能なモータ駆動ユニットを反射素子ユニットごとに設置。
図4 反射板構成 (a)GND板駆動ユニット
図4 反射板構成 (b)反射位相可変原理
GND板位置変更による反射指向性特性
2×2の4素子の反射素子に対し1つのGND板を設け、合計16個の可変GND板で構成し、各ユニットのGND板と反射素子の距離を変えることにより、反射方向を水平・垂直方向で同時に可変(微調整)したシミュレーション結果。
図5 反射指向性比較 (a)基準反射指向性
図5 反射指向性比較 (b)GND板位置変更後の反射指向性
メタサーフェス反射板試作
図6 GND板可変機構付きメタサーフェス反射板
【参考文献】
※1 総務省 総合通信基盤局 電波部 電波政策課, “アクティブ空間無線リソース制御技術に関する研究開発,” 電波資源拡大のための研究開発 研究開発課題便覧 pp24, 2022年.