パラボラアンテナの数は減っています。今日では通信の基幹となる回線には光ケーブルが使われるようになったことがその主な理由です。マイクロ回線と光回線とでは運べる通信容量がけた違いなのです。パラボラは光ケーブルが得意でない分野、例えば各家庭用の衛星放送受信アンテナ、災害時の臨時衛星回線、宇宙通信、電波望遠鏡などで活躍しています。
第11回
いろいろな形をしたアンテナⅢ(パラボラアンテナ2)
① パラボラアンテナの構造と性能
図42はさきの図41の焦点部分に実際の電波放射源(一次放射器)を配置した写真です。回転放物面の反射鏡、この反射鏡に電波をぶつけるための一次放射器、一次放射器まで電波を導く導波管、一次放射器と導波管を支えるステイとよばれる支持構造体、等が配置されています。
反射鏡から突き出した導波管がUの字状に曲がって、電波を導き、一次放射器から反射鏡に電波を吹き付けます。この一次放射器の位置が回転放物面の焦点に重なるように、構造を決めればよいわけです。
アンテナが比較的小さい場合はこれでいいのですが、大きくなるとこの導波管部分が長くなり、伝送損失が気になってきます。また導波管が反射鏡へ向かう電波の妨げになることも明らかです。
図43は弊社製品である衛星通信用地球局アンテナです。導波管を用いるかわりに副反射鏡を配置します。図44に原理図を示しましたが、(a)に相当し回転楕円面の副反射鏡を用いています。
図42 パラボラアンテナの構造
楕円には一方の焦点f1からの電波を反射して、もう一方の焦点f2に集めるという性質があります。ですからその焦点f2を主反射鏡の放物面の焦点に重なるよう配置すればいいわけです。これをグレゴリアン・タイプと呼びます。
一方、図44(b)では、回転双曲面の副反射鏡を用いています。双曲面は一方の焦点f1からの電波を反射するのですが、このときにあたかも、もう一方の焦点f2から出たかのように反射するという性質があります。ですからf2が回転放物面の焦点に一致するように配置することで目的が達成できます。これをカセグレン・タイプとよびます。
これらはいずれも天体望遠鏡に使われた原理であり、その呼び名を用いております。
図43 グレゴリアン・アンテナ
図44 パラボラアンテナの原理
② パラボラアンテナの性能
さてパラボラアンテナの開口面で位相がそろった平面波になったと書きましたが、5章で述べたキルヒホッフ-ホイヘンスの原理により、この平面波は結局拡がってゆきます。しかし波長に対する開口の幅が大きいほど拡がりにくくなる、つまり放射するビーム幅が細くなります。
図45に示すように、開口直径がDのパラボラアンテナを想定すると、その指向性は図45の右のようになり、図中に示した3dBビーム幅BwとDおよび使用周波数での波長λの関係は平均的には次式になります。
図45 パラボラアンテナの指向性
つまりビーム幅は開口直径に反比例します。アンテナが大きくなるほどビームが細くなります。細いビームを放射できるということは、結果として強い電界を相手に送ることができるというわけです。これがアンテナの利得であり、パラボラアンテナのような開口面を有するアンテナの利得Gは次の式で表わされます。
ここでηは開口能率です。開口直径と3dBビーム幅および利得(dB) の関係を数値的に整理すると図46のようになります。ここでηは60%としました。
ところでこの開口能率ηは、開口面がどれほど効率的に使われているかを表わします。ηは通常60%前後の値になります。つまり普通は開口面積の60%程度しか有効に使っていないということになるわけです。勿体ない、どうしてもっと有効に使えないのかということになります。
図47に開口面上の電界強度分布の断面図を示し、その分布に対するηと第一サイドローブレベルを示しました。開口全体を一様な強さで使う場合は開口能率が高く、端でレベルが下がるとηも下がります。しかし第一サイドローブレベルは一様分布では高くなります。
図46 開口径とビーム幅・利得
一次放射器やステイが開口の前にあると電波がブロッキングされてηが下がるので、図48のようなオフセットタイプも多く使われています。
図47 開口分布による特性の違い
図48 オフセットパラボラアンテナ